エリウド・キプチョゲのサブ2(2時間切り)を可能にしたものは何か?

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はじめに

遂に2019年10月12日エリウド・キプチョゲが、オランダの特設コースでサブ2(フルマラソン2時間切り)を達成しました。

記録は1時間59分40秒(非公認記録)だったそうです。

キプチョゲがサブ2にチャレンジしたのは今回2回目で、ナイキがサポートした“BREAKING2”というプロジェクトでした。

この“BREAKING2”では、わずかに25秒及ばずという結果に終わったのはご存じの方も多いと思います。

今回のプロジェクトはナイキではなく、イギリスのINEOS社がメインスポンサーとなっており“INEOS 1:59 Challenge”というプロジェクトとして行われ、Youtubeでライブ配信も行われました。

(このプロジェクトの動画を見る限り、キプチョゲを始めペースメーカーを務める全てのランナーがナイキのシューズと、ナイキのロゴの入ったウェアを着用しているので、多少ともナイキが絡んでいた可能性はあります)

前置きはさておき、今日はこの“INEOS 1:59 Challenge”に関して、僕が思ったことを書いてみました。

フルマラソンサブ2の凄さ

“BREAKING2”にしても今回の“INEOS 1:59 Challenge”にしてもそうですが、通常のレースのような選手同士が競い合うのとは違い、サブ2を達成させるためだけに様々な条件を整えた上で成し得た記録と言われています。

とは言え、サブ2というのは凄い記録だと思うのですが、僕のような市民ランナーには想像もつかない世界です。

今回のプロジェクトでは10,000メートルの日本記録保持者である村山紘太選手がペースメーカーの1人として参加していたということもあり、10,000メートルの日本記録と、キプチョゲのフルマラソン サブ2を1キロの平均ペースに換算してみました。

また、お馴染みの2019年箱根駅伝で総合優勝した東洋大学の記録(10時間52分9秒・距離217.1キロ)の1キロの平均ペースとも比較しておきます。

  • キプチョゲ サブ2の平均ペース 約2分50秒/km
  • 10,000メートル日本記録の平均ペース 約2分45秒/km
  • 2019年箱根駅伝総合優勝記録の平均ペース 約3分00秒/km

もちろん、10,000メートルと42.195キロを単純に比較することはできませんが、1キロの平均ペースが5秒しか変わらないというは、物凄いことではないかと思います。

また、箱根駅伝は1人20キロくらいの距離を10人で走るので、サブ2ペースに届くのかと思いたいところですが、ハーフマラソンの日本記録は設楽悠太選手の1時間0分17秒ということを考えると納得はできます。

以上は素人目線にしかすぎませんが、こうしてみるとキプチョゲがいかに凄いことを成し遂げたのかがお分かりになると思います。

ちなみに村山選手は5000m 13分19秒62という日本歴代8位という記録を持っていて、今回のペースメーカーとして5キロほどを走っています。

この時の5キロごとのラップタイムは平均すると14分12~13秒位なので、5000m 13分19秒62という記録を持つ村山選手の実力からすると、そこそこ、余裕で走っていたのではないかと思います(だからこそ選ばれたわけですけど)。

どのようにしてサブ2を達成したのか

ここでは、エリウド・キプチョゲの身体的能力云々ついては書くつもりはありません。

というか書けないので、その点は割愛します。

今回のプロジェクトは、あくまでも、エリウド・キプチョゲをサブ2達成に導くために、様々な条件を整えたレースだったわけでして、その“条件”に着目してみることにしました。

精密機械のようなイーブンペース

まず、僕が驚いたのは5キロごとのラップタイムです。

5km  14:10
10km  28:20(14:10)
15km  42:34(14:14)
20km  56:47(14:13)
25km 1:10:59(14:12)
30km 1:25:11(14:12)
35km 1:39:23(14:12)
40km 1:53:36(14:13)
42km 1:59:40(06:04)

まるで精密機械のようです。

通常のレースであれば、タイムよりも順位を優先し、他のランナーとの競り合いや、けん制などによってペースが乱れ、余計な体力を消耗してしまうことになりますから、結果的に記録が出ない可能性があります。

逆に競い合って記録が出ることもあるかもしれませんが、サブ2をより確実にするためには、人間よりも時間と競う方がいいわけです。

よって、今回のようなプロジェクトは、徹底してペース配分がコントロールされていたことが容易に想像できます。

先導車がレーザー照射しその後をペースメーカーが走る

恐らく、ランナーによるペースメーカーよりも、正確なラップタイムを可能にしたのは車による先導です。

先導する車からレーザーが地面に照射され、ペースメーカーはその印に合わせて走っています。

コンピューターやGPSなどの技術を駆使して、車を正確に一定の速度で走らせていた可能性もあります。

また、動画を見るとコースとなった道路には、車幅に合わせて黄色いラインが引かれており、先導車はこのラインをトレースするように走っていました。

走る距離が狂わないように、主催者が特別に施したものと思われます。

ちなみに、先頭を走るペースメーカーの何人かは、うつむき加減で走っていることが多かった気がしたのですが、地面に照らされたレーザーを見ながら走っていたのかもしれません。

とすれば、ペースメーカー達は、ペースを正確に保つことに相当神経を使っていた(徹底されていた)ということになります。

ほぼ直線でフラットなコース

全行程の90%が直線で高低差のほとんどない周回コースを使用したのも、イーブンペースを可能にした大きな要因でしょう。

カーブは折り返し地点のみで、しかも400メートルトラックのカーブとあまり変わらない感じなので、ここでもペースが落ちることはほとんど無かったものと思われます。

また、コースの大部分は並木道で、風を遮るように木々が覆い茂っており、風の影響も少ないように見えました。

サブ2達成に理想的なコースが選ばれたという理由も納得できます。

給水などの補給は並走する自転車から受けペースダウンを避ける

もう一点、イーブンペースの可能性を高めたのは、給水などの補給方法です。

動画では、だいたい5キロおきに自転車で並走するスタッフから補給を受け取っており、ロスタイムの微塵もありませんでした。

通常のレースなら、5キロ間隔で給水ポイントがあり、どんな一流選手でも給水を受けないということはありえません。

キプチョゲほどの選手になれば、給水でスピードが多少落ちたとしても直ぐに挽回可能なはずですが、ほんの少のペースの緩急を避けることによって無駄な消耗を防けるように徹底されたものと思われます。

風圧の影響を避ける

実質的なペースメーカーは先導車だとすれば、ペースメーカーの役割は一体何なのでしょうか。

注目したいのは、独特なフォーメーションです。

キプチョゲの前方を5人のペースメーカーがV字型をつくり、キプチョゲの斜め後方を2人のペースメーカーが走ることで、全体的にX字型のフォーメーションをつくっていました。

そして、先頭の5人のペースメーカーは先導車から照射されるレーザーに合わせV字型を維持しながら走っていました。

この独特のフォーメーションを全くと言っていいほど崩すことはなく維持していたということは、風圧による影響を少なくするためだったと考えるのが自然だと思います。

ちなみに、キプチョゲは時折右や左に位置を少しだけ変えながら走っており、風の影響を受けないように、していた可能性があります。

また、キプチョゲの後方2人のペースメーカーにも注目したいところです。

キプチョゲの後方に生じる乱気流対策とも見て取れますが、前方5人のペースメーカーに何らかのトラブルが発生した場合に備えていたとも考えられます。

あるいは、両方かもしれません。

いずれにしても、サブ2のペースとなれば、時速20キロで走ることになり、このスピードで生じる風圧を2時間もの間受け続ければ、体力の消耗は少ないとは言えないはずです。

ちなみに、ペースメーカーは、40人にも及ぶ一流ランナーを揃え、前5人は5キロごと、後ろの2人は10キロごとに、交代していたように思います。

マラソンに最適な気象条件

気温9℃、風速0.5〜1.5メートルという、フルマラソンに理想的な条件で行われています。

しかも、レースには予備日が設定され、最適な天候の日が選ばれたといいます。

沿道の声援

今回のレースは一般の公道で行われ、沿道では一般観客が観戦し声援を送ることができたそうです。(前回のBREAKING2では閉鎖されたサーキット場で行われ一般観客はいなかった)。

もちろん、観客の声援が力になったに違いありません。

ナイキの新シューズ

ナイキ ズームX ヴェイパーフライ ネクスト%の後継モデルと思われる新しいシューズもサブ2達成に貢献したと言われています。

ケニアと時差が少ない開催地オランダ

オランダでこのイベントが行われた理由の一つとして、キプチョゲが住むケニアとは時差がほとんど無いという理由もあるようです。

そこまで徹底されていたとは・・・・

市民ランナーが参考にしたいキプチョゲのサブ2達成

キプチョゲのサブ2なんて、雲の上のような話しなので、僕達のような市民ランナーには参考にならないなんていうことはありません。

特に、徹底してイーブンペースで走っていたという点は、ランニングエコノミーの観点から最も効果的な方法であることが、キプチョゲのサブ2達成によって証明されたわけです。

なので、僕達市民ランナーこそ、本当に参考にしたい点ではないかと思います。

もちろん、記録更新を狙いたいなら、季節は冬、平坦路で風が強くないコースを選ぶということになるのですが、自分の力ではどうにもならない部分です。

レースではイーブンペースを維持して走ることが重要であるということを教えてくれたのではないかと思います。

ちなみに、僕がレースの時に使用しているランニングウォッチは、リアルタイムで平均ペースが確認でき、1キロにアラーム(もしくはバイブ)が鳴って、スピリットタイムを教えてくれるようにセットしています。

つまり、周りのランナーに惑わされることなく、常にイーブンペースで走ることができるわけです。

この時計(機能)を使うようになってからは、ターゲットタイムから大きく外れるような走りは無くなりした。

もちろん、普段の練習で自分の最適なペースを知っておく必要があります。

おわりに

このプロジェクトの動画を見て感じたことが、もう一つあります。

レースの内容は、前述したようにペースメーカーが車のレーザー照射に合わせて走り、キプチョゲはその後を走っているだけで、誰が勝つかなんていう、ドキドキハラハラのレース展開はありません。

見方を変えると、ペースメーカーやキプチョゲは、前を走る車のレーザーにただついていくだけの仕事を行えばよく、頭を空っぽにして走っていた可能性があります。

以前、大迫傑選手が、走っている最中はできるだけ何も考えないようにしている、みたいなことを言っていたのを聞いたことがあります。

その意図としては、脳を使うということはそれだけエネルギーを消耗することになり、エネルギー効率的には、あまりよろしくないということなのかもしれません。

今回のプロジェクトが、そこまで計算されていたのであれば、相当なものです。

ちなみに、このレースのスポンサーであるINEOS社は、自転車最大のロードレースであるツール・ド・フランス2019年の優勝チームのスポンサー企業でもあります。

キプチョゲのサブ2達成に向けて、最先端のサポートを行ったことは、容易に想像がつくことではあります。

キプチョゲサブ2達成の模様はこちらの動画をご覧ください。

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