以前、私の友人がうつ病を患い自殺寸前まで追い込まれ挙句の果てに会社を退職させられる羽目になってしまったという話しをこのブログに書かせていただきました。
この記事の前篇はこちら
彼女からその話を聞いて、約1カ月が経過したのですが、私の中では悶々とした気持ちがずっと続いています。
恐らくこの記事を読んで「うつ病を患う前に会社を辞めて転職するなどできなかったのか?」とか「うつ病を予防する手立ては無かったのか?」など、様々な疑問を持った方々も多かったのではないかと思います。
今回は私なりの考察を書いてみたいと思います。
目次
ストレスへの耐性は個人差が大きい
「うつ病を患う前に会社を辞めればよかったのでは?」と言われれば、それが正解だとは思います。
人は病気を患うために仕事をしているわけではありません。
精神的にも物質的にも良い生活を送るために仕事をするのではないでしょうか?
にもかかわらず仕事や職場の人間関係が原因で、うつ病になってしまうなど本末転倒です。
しかし仕事をする以上は、必ずと言っていいほどストレスは付きもので、同じ上司の下で同じ仕事をしていたとしても、うつになる人もいれば、ならない人もいます。
なぜならストレスへの耐性や受け流し方など、人によって大きく違うからです。
相談に乗ってくれる人、愚痴を聞いてくれる人がいるだけで救われる
ストレスへの耐性が弱くても、受け流し方が下手くそでも、ストレスを軽減する方法はいくらでもあります。
その一つに「人に相談すること、話すこと」だと言われています。
しかし、うつ病を患った人はこういいます「愚痴を言っても、人に相談しても何も解決しない」と。
確かにその通り、うつ病の原因となることは何も解消できないのかもしれませんが、一つだけ大きく変わることがあります。
人に話すことによって、抱えていたストレスが驚くほど軽減されるのです。
では彼女はどうだったのでしょうか?
人に愚痴を話すとか、相談するようなことはほとんど無く、だからと言って親友や相談できるような知り合いがいなかったということではなく、自分の個人的な事で人に迷惑をかけたくないという気持ちが大きかったのだといいます。
実際に私が話しを聞いている間に、「迷惑かけてごめんなさい」という言葉が何度も彼女の口から出てきました。
私は彼女の「人への気遣いの強さ」が、結果として大きく裏目に出てしまったのではないかと思います。
時には、強引にそして身勝手に、誰かに愚痴をぶちまけることも大切なのかもしれません。
一流企業に勤めていると意外にうつ病になりやすい
私の会社員時代にも、うつ病を患った同僚が数人いましたし、ニュース沙汰にはならなかったものの自殺してしまった人もいました。
会社の規模が大きくなればなるほど、動くお金の大きさが億単位であったり、組織の論理によって自分の意図しない方向に物事が動いてしまったりと、様々な緊張やストレスは尽きないのではないでしょうか。
また、入るのも難関と言われる人気一流企業にやっとの思いで入社した人ほど、度重なるストレス受けながらも我慢して働き続け続ける傾向があります。
平均年収を上回る給料、充実した福利厚生、大きな社会的信用など、大企業に勤めるメリットと引き換えに、ついつい頑張りすぎてしまうのです。
彼女の場合といえば、アラサーでマンションを購入し定年退職まで勤めあげることをずっと前から公言していたので、何が何でも辞められないという気持ちが強かったのではないかと思います。
うつ病と薄々自覚していても認めたくは無かった
彼女は、もしかしたら自分がうつ病かもしれないという自覚があったにもかかわらず、病院に行こうとは思わなかったといいます。
その理由は、何よりも一度うつ病と診断されてしまえば、自分は負け組になってしまうのではないかという恐怖心が大きかったからだと語っていました。
うつ病を患ってしまったというだけで、会社は忍耐力が弱い人材というレッテルを貼り、出世の道が絶たれてしまう。
そうなってしまうことを恐れて、診断を受けることを拒否し、うつ病は進行し、結果として悪循環に陥ってしまい、自殺に寸前まで追い込まれることになってしまったのです。
最後の最後まで辞めるという選択肢は無かった
「うつ病でボロボロになる前に、そんな会社辞めてしまえばよかったのに」と当事者以外は簡単に口にすることでしょう。
もし自殺してしまったら、なおさらのこと「死ぬ位なら会社を辞めた方がよほどマシでしょう」と誰もがそう言うに違いありません。
しかし、うつ病を患い自殺の淵をさまよう状況で、人は正常な思考や判断ができるとは思えません。
彼女の場合もドクターストップで止む無く休職する状況になるまでは、毎朝空っぽな心で這うように出勤することが精一杯で、会社を辞めるなどという思考は全く働かない異常な精神状態が続いていたといいます。
会社はそれほどあなたの面倒をみてくれない
彼女が勤める会社には、労働組合があり、さらには産業医や心理カウンセラーが常駐する一般的には恵まれた環境でした。
特に心理カウンセリングが会社の中で自由に受けられる環境というのは、国内の企業では草分け的な存在なのだと言われています。
しかし、彼女は自分がうつ病と診断された後、労働組合にも心理カウンセラーにも何度も足を運んだものの、うつ病が改善することも職場環境が改善することもなかたといいます。
従業員の労働環境を改善しなければならはい労働組合も、従業員のメンタルをケアするべき心理カウンセラーも、結局は彼女とって無用の長物でしかありませんでした。
最後は労働組合も心理カウンセラーも会社側に責任があると認めることはなかったのです。
結局は辞めるしかなかった
社員がうつ病を患ってしまった場合、会社はどのような対応を行うのでしょうか?
多くの会社が「厄介な問題として捉え、事を荒立てることなく、速やかに解決したい」と考えるでしょう。
本音は、出来る限り揉め事もなく自己退職して欲しいのです。
会社にとっては「戦力にならない人材を長い間抱えたくはない」とか「自殺でもされたら会社のイメージが損なわれてしまう」など、その程度の理屈なのです。
彼女は会社のそういった思惑を悟り、辞めることを決断したのだといいます。
最後に
その会社はCSR(社会的責任)と称して様々な活動を対外的に情報発信するクリーンなイメージの会社です。
従業員向けのメンタルヘルスマネジメントもその一環でしょう。
しかし、そんな会社であっても、仕事のストレスが原因でうつ病を患い自殺寸前にまで陥ってしまった社員を救済しなかったのです。
最近、就活生からも人気絶大な大手広告代理店の電通に勤める女性社員の自殺がニュースになりました。
私は、特段驚くこともなく、これが社会の現実なのだと変に納得してしまいます。
同じようなことはこれからますます増えるでしょう。
私たちはこのような現実をどのように受け止めてどのように対処すればいいのか、日頃から準備しておくしか手立てはないのです。