僕は会社員を辞めて小さな会社を経営しています。早いもので起業して7年が経過しました。起業してから数年は人材に恵まれたおかげで、会社の業務は滞り無く流れていました。
しかし、常に順風満帆とはいきません。起業から5年目に採用した新人がとんでもなく仕事ができず、会社が大変なことになりました。
1人の仕事ができない新人が会社の歯車を狂わせていった
それまで働いてくれた従業員が特別優秀だと考えたことはありませんでした。しかしこの時ばかりは違いました。けれまでなんて優秀な従業員に恵まれていたのだろうかと。
しかし、「こんな簡単な事」と思っていたことが人によっては、簡単にはできなかったり、覚えられない場合があるのです。自分が常識だと思っていることが、全ての人に当てはまるわけではないのです。
実は問題になったのは他の従業員でした。「こんな事もできないんですよ・・・」、「またミスしたんですよ・・・」、「何であんな新人を雇ったんですか・・・」と愚痴がでるばかりで、新人をきちんと指導している様子がないのです。こうして他の従業員にも悪影響が及ぶようになり、今までスムーズに回っていた歯車が狂い始めたのです。
この時の僕の選択肢は新人を解雇しもとの状態にもどすか、これをきっかけにくすぶっていた会社の弱点を克服するかの2択しかありませんでした。もちろん僕が選んだのは後者です。
僕は、これもいい機会だと考えていました。起業して5年が経過し、社内の活気が薄れ倦怠期に陥っていました。一人のとんでもない新人が入社したことによって、社内が活性化する良いきっかけになればいいと僕は考えたのです。
対策は業務ツールを利用すること
僕は新人の為に業務マニュアルを作成することにしました。
僕がまず取り組んだのは業務の棚卸しです。業務マニュアルを作成するためには、まず業務内容を全て書き出して把握する必要があるのです。
僕の会社は僕を含めて全ての従業員が同じ業務を行います。もちろん僕は経営とマネジメントを同時にこなしています。僕は棚卸し表を作成し各人が夫々行っている業務を書き出してもらい、従業員全員で内容を確認し合いながら整合をとりました。
次に、棚卸し結果をもとに従業員全員と話し合いながら、業務改善を行いました。具体的には無駄な業務を削減し、手薄となっている業務を強化すること、そして各人ごとの業務のムラやバラツキを無くすことでした。
次に業務フローを作成して仕事の流れが可視化できるようにしました。ここまでできればマニュアルは8割完成したようなものです。新人にも分かりやすい言葉と図解に書き換えるだけで業務マニュアルの完成です。ついでにミスを防止するために業務チェックリストまで作ってしまいました。
新人は仕事を覚え従業員全員に業務を効率化していく意識が芽生えた
業務マニュアルができたおかげで、仕事覚えの悪い新人は何度でもマニュアルを見直すことができ、いちいち先輩社員の仕事を中断させることもなくなりました。また先輩社員はマニュアルに不備や分かりにくい部分があれば、何度も改訂作業を行うようになりました。その方が怒ったり叱責するよりも効果的だということが分かったからです。これによって新人への指導に対する意識を高めることができました。
また、仕事の棚卸しにより業務を改善できたことも大きな収穫でした。このことにより日常的に無駄な業務を改善したり、成功事例を従業員全員で共有したりといった、改善活動の意識が芽生えるようになりました。
最後に
僕にとっては、一人の出来の悪い新人のおかげで災い転じて福来るといったとことでしょうか?実は業務の棚卸しや業務マニュアルの作成はそろそろ行いたいと考えていたことでした。僕は前職では普通に行っていたことなのですが、従業員さんたちにとっては何のためにやるのかを説得するのが結構大変でした。
棚卸し表や業務マニュアルは単なるツールでしかありません。肝心なのはこれらのツールを利用することによって、仕事の無駄を無くしたり効率化を図る意識を日常的に持ってもらうことなのです。ちなみに、この新人さんは今では何事もなかったように一人前に成長することができました。