素晴らしい本【炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学~】

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はじめに

今更ながら糖質制限ネタを書くことにしました。

以前、「炭水化物が人類を滅ぼす~糖質制限からみた生命の科学~」という本を友人から譲り受けたのですが、ぱらぱらと読んだだけでした。

友人から「面白いから読んでみろ」と言われて、渡された本があります。偶然にも以前からタイトルだけは気になっていた本でした。 タ...

ちゃんと読んでもいないのに、書評と言えるほどのでもない書評を書いてしまい、これでは筆者の夏井先生に失礼かと、心のどこかに引っ掛かるものがあったので、コロナ渦で時間があるこの時期に読んでみました。

ちなみに僕自身は過去に糖質制限ダイエットを2年間実践したことがあります。

別に糖質制限をしなくても痩せることは可能ですし、糖質制限をしたからといって特段健康になったというわけではないので、どうしてもこの手の本には懐疑的な見方をしてしまいます。

詳しくはこちらの記事もご覧ください

どうもこんばんは。 パスタとラーメンが大好きなエノカツです。 なにを隠そう、私は糖質制限ダイエットを2年間続けましたが止めてしまいま...

全体を通しての感想

前半は筆者が糖質制限を実践し簡単に痩せられたことや高血圧と高脂肪血症が正常に戻ったことなどの体験談から始まり糖質制限の基本的な知識、糖尿病治療やカロリーへの疑問、生命体の進化や農耕の歴史へと続き、人類は農耕が無ければ今のような発展は無かったと主張しておきながら、最後は穀物は実は偽りの神だったと締めくくられています。

糖質制限を切り口として展開される壮大かつ奇想天外なストーリーは、ある意味SFと割り切れば楽しめるのではないかと思います。

エビデンスなどの学術的に基づいたものは少なくツッコミどころは満載ですが逆に楽しませてくれますし、夏井先生はあとがきでも”反感を承知の上の大胆な仮説”と書いていますので、この点を考慮して読めば納得できるかと思います。

Amazon風に評価するならば僕は星を5つ付けてもいいと思っています。

以上が全体を通しての書評です。

おわり。

と、これで終わってしまっても面白くないですし、科学の知識が小学生レベルの僕が思わず突っ込んでしまうことが多々見受けられましたので、重箱の隅をつついてみようかと思います。

昼のお弁当のご飯を抜いて痩せたのは糖質制限の効果でしょうか?

夏井先生の体験談として、朝はオールブランのシリアル、昼は売店で買ったお弁当、夜は日本酒と野菜炒めと焼き魚で主食無しという、もともとは糖質少なめの食生活を送っていたものが、次第にお昼の弁当のご飯を減らしてご飯抜きになり、夜は日本酒から焼酎に変えたら70キロあった体重から59キロに落ちたことが書いています。

食生活で変わったことと言えば昼の弁当のご飯を抜いて、日本酒から焼酎に変えたこと。

ですが、これだけだと糖質が減ったのと同時に摂取カロリーも減ったということになります。

糖質制限ダイエットはカロリーを気にせず痩せることができるというのであれば、摂取カロリーを維持もしくは増えたとしても体重が減ることを証明してほしかったです。

体調が改善されたのは糖質制限したから?

糖質制限を行うようになっていびき、睡眠時無呼吸が改善されたそうです。

また、夏井先生に寄せられた体験談にも、若返った、身体の爽快感、マラソンなどの記録が上がった、γ-gtpなど肝臓の数値が上がったなどとありますが、これも一般的には痩せることで改善されるでもあります。

糖質制限との因果関係について、もっと科学的に深堀りしてほしかったです。

糖質は本当に消化が悪いのか?

お酒に酔ってゲロしたものを見ると、米、麺類ばかりで、肉は見当たらず、つまり糖質は消化が悪い食べ物なんだそうです。

一般的には糖質を摂取するとたんぱく質や脂質よりも早く血糖値が上昇するはずです。

これはすなわち、糖質の消化はたんぱく質や脂質よりも早いことを意味しているはずですが、この矛盾をきちんと説明してほしかったです。

あと、ゲロの中身をきちんと調べたんでしょうかね?目視だけで本当に糖質しか残っていないとわかるのでしょうか?

食パンや白米に含まれる糖質を角砂糖に換算して例えることの意味

夏井先生は糖質制限へ導く説得材料として食パンや白米にはあたかも体に悪そうな〇〇個分の角砂糖と同じだけの糖質が含まれているのだと説明しているそうです。

そんな体に悪そうな角砂糖ですが、時として人の命を救う場合もあります。

例えば、登山者が遭難した場合を考えてみましょう。

もし登山者が角砂糖を持っていたとすれば、何も食料を持っていない場合と比較して、助かる確率かなり高くなるはずです。

同じように、医療現場ではブドウ糖を点滴で使用することは医者であれば知っているはずです。

糖質は摂りすぎれば毒になりまりますが、適量であれば生きていくために重要な役割を果たします。

それは他の栄養素も同じはずです。

糖質を食べると眠くなる?

昼食のあとに眠くなるという現象は一般的にもよく聞く話しで、これが糖質のせいだとすれば、僕のように糖質を思いっきり食べていても眠くならないケースというのはいったいどういうことなんでしょうか?

まぁ、これは糖質制限とは関係ありませんが、もっと驚いたのは、夏井先生や周りのお医者さん達は、皆昼食後に眠りこけていて、それが普通だっということです。

お医者さん達は、僕たちのような一般人よりもお忙しい方達ばかりだから、日常的に睡眠不足なんでしょうか?

炭水化物は必須栄養素ではないから食べる必要はない?

必須栄養素とは体の中でつくりだすことがてきないビタミン18種類、ミネラル20種類、必須アミノ酸8種類の栄養素のことであり、ほとんどが微量摂取すればよい栄養素です。

つまり、必須微量栄養素なんて普通に食事をしていればそうそう不足することはありませんから、ほとんどの人が何が必須栄養素なのかなんて知らないし、知らなくても事足りてしまっているのが普通です。

例えば、日本人の主食である米には、糖質だけでなくビタミンやミネラルも微量に含まれており、必須微量栄養素の一部も自然に摂取できてしまいます。

もちろん、肉にはアミノ酸以外にミネラルやビタミンが含まれていて、必須微量栄養素の種類や量は食品によって異なります。

つまり、色々な食品を食べることで、必須微量栄養素を満たすことができるんです。

もし炭水化物は必須栄養素ではないから主食は必要が無いというのであれば、単に合計46種類の必須微量栄養素だけをサプリで摂って、必須栄養素でないものは摂らない方が健康に生きていけると言っているようなものではないでしょうか?

炭水化物が必須栄養素でないから食べる必要が無いというのなら、アルコールも必須栄養素ではないので飲むなとは主張していません。

夏井先生はお酒が好きそうなので、酒飲むなというのはやっぱり都合悪いんでしょうかね?

日本人の平均的な食事にバランスに科学的根拠が無い?

厚労省と農林水産省が推奨する「食事バランスガイド」は、日本人の食事調査がベースになっている点を科学的根拠が無いと意を唱えています。

日本人の平均的な食事バランスを調査し、これを推奨することが何故間違っているのでしょうか?

日本人は世界屈指の長寿国です。

そんな日本人が食べている食事を調査した結果は、健康な食事バランスを証明できる最も信頼できる科学的なエビデンスなはずです。

新薬が開発される場合にも、薬の安全性と有効性を人で試す臨床試験を行います。

論より証拠が重要となることくらいはご存じのはず。

ちなみに糖質制限には、これ以上の圧倒的なエビデンスが存在するのでしょうか?

糖質は本当に必要ないのか?

夏井先生は初期人類は狩猟採集生活により肉食中心の生活だったものが、1万年前から農耕の発達により炭水化物をたくさん食べるようになり爆発的な発展を遂げたが、結局は(穀物)炭水化物は偽りの神なのだと言っています。

炭水化物が偽りの神だとしても、このように考えることもできます。

人類は1万年の農耕を通して炭水化物と上手に付き合い、適応できるように進化を遂げた、もしくは進化の途中なのかもしれません。

事実、人間は糖質を消化吸収し、エネルギーとして利用できる機能を持っています。

そして、余った糖質は皮下脂肪として蓄えますが、これは決して無駄なことではなく危機に備えるために重要な機能です。

これは、完全か不完全かはさておいて、糖質に適応していると言えないでしょうか?

問題は糖質の摂りすぎであり、糖質を摂ることや糖質そのものが悪いわけではありません。

糖質だけでなく、たんぱく質も脂質も摂りすぎれば毒になることくらいは、夏井先生でも知っているはずです。

今、新型コロナウイルスに世界中が大混乱していますが、人類は大昔からウイルスの脅威に何度も晒されて、その度に人工が激減し、抗体を持ちウイルスに打ち勝った人類だけが生き残ってきた歴史を持っています。

同じように人類が炭水化物に適応するということは、生き残っていくために必要な進化だとは言えないでしょうか?

糖質制限という信仰宗教

夏井先生は糖質制限をするようになって糖質センサーが敏感に働くようになったと書いています。

僕も糖質制限を実践している間は同じような状況になりました。

糖質制限すると普段から糖質の微妙な甘さや匂いから縁遠くなりますから、たまに糖質を口にするとこれが違和感となります。

この反応は糖質は体に悪く食べてはいけないもの、という心理的な思い込みにより増幅されます。

次第に、テレビなどでラーメンやカレーライスなど糖質たっぷりの料理を食べる様子を見るだけで苦痛になります。

さらにこれがエスカレートすると、糖質を食べる人、それらの料理を提供する外食産業、食品製造業、農業従事者、カロリー制限を提唱する糖尿病治療や栄養学までもが悪の化身であるかのように考えるようになります。

糖質を否定することが正義となるのです。

これはまさしく新興宗教に似ています。

おわりに

もっとたくさん書きたいことがあったのですが、きりが無くなるのでこの辺にしておきます。

とにかく感心したのは、糖質制限を切り口にして、生物学的、考古学的、栄養学的な視点で、糖質制限に都合の良い理屈をこれでもかと膨らませている点です。

夏井先生には、映画やドラマの脚本家や小説家などの才能があるのではないでしょうか?

是非、そういった分野でも活躍してほしいですね。

ちなみに僕はこの本を読んでまた糖質制限ダイエットを再開しようという気にはなりませんでした。

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