先日、往年の名デモ(仮称S氏)のレッスンを受ける機会がありました。
S氏はワタスキ&SKI NOW世代の僕にとって、憧れ、いや神的存在でして、もちろん技術選で優勝経験のある名スキーヤーで、年齢的には僕より少し先輩にあたります。
ご本人の許可を得ていないので、これ以上詳しく書くことはできませんが、同じ世代で基礎スキーをやっていた人なら誰でも知っていると思います。
さて、本題です。今日はS氏にレッスンを受けて感じたことやちょっとしたエピソードを、少しばかり書いてみたいと思います。
緩斜面で低速深回りパラレルターン
レッスンバーンへ移動する時のこと、普通なら直滑降でスーッと滑り降りたくなるような緩斜面をS氏はゆっくりと、しかも深回りのパラレルターンで移動していました。
僕は、S氏の後をトレースしようと試みますが、S氏のターンはなかなか終わらずに山側に登っていきます。
僕は、山側に登ることはできずに、あまりの低速が故にバランスを崩しそうになり、S氏よりも下がった位置でターンするしかありません。
緩斜面で低速にもかかわらず深い“つの字形“を描きながら華麗なパラレルターンで滑るS氏、僕はなかなか後をついていけずに苦慮しながらも、S氏のスキーの動きを注意深く観察しました。
S氏は、必要以上に角(エッジ)を立てずに滑っていました。しかも、スキーのトップからテールまでスキーの滑走面全体をスキッドさせながら、スキーを円く回転させていたんですね。
コブの中では雪面に対して滑走面をフラットに置く
更に凄いのは、“エッジを外す滑り“”面を使う滑り“を、様々な斜面で使えることです。特にコブ斜面でその真価が発揮されます。
コブ斜面を上手に滑れない特徴の一つとして、スキーがコブの溝に入ったまま、勢いよく飛び出してしまうことでしょう。
この状態はコブの溝でエッジが立った状態になり、そこからエッジを外せず、切り替えができないわけです。
S氏は起伏の激しいコブの中でも、常にスキーの滑走面を雪面にフラットに置いて滑っているように見えました。もちろん、最低限のエッジングは行いつつ滑っていて、必要以上に角を立てない滑りなんです。
この必要以上にエッジを立てない滑りによって、コブの中でも自在にターン弧を描きスムーズな切り換えが可能になるのです。
面を使って滑る方法とは
もちろん、スキーはエッジを雪面に立てなければ曲がりません。しかし、必要以上にエッジを立ててしまうと、スキーがガッチリと雪面に食い込んだままになり、そこから自在に操作することが難しくなります。
S氏は上手くエッジを外しながら滑ることにより、小さな力で自在な操作を行っていました。
だからといって、常にズレズレで滑っている訳ではありません。“必要以上にエッジを立てない”というだけで、斜面状況や設定スピードに応じて、2本の細い線をくっきりと刻むようなフルカービングも見せてくれました。
では、なぜ自在なエッジングが可能になるのか、これは正直具体的な方法を一口で説明するのは難しいのですが、ここでは、足首、膝、股関節、腰などの関節を上手く使いながら、良いポジションに乗って滑っているから、といった曖昧な事しか言えません。
というのも、スキーヤーの滑りは千差万別です。なので、個々のスキーヤーに応じて、「腰の向きを○○した方がいい」とか、「切り替え時のポジションを○○してください」など、個別の対応をするしかないのが現状なんですね。
もし、スキーのエッジを立てて滑る癖がある人は、横滑りの練習をするといいです。
横滑りは1級の種目でもありますが、指導者検定の種目にもなっているほど重要な滑り方です。
1級のバッジテストでは他の種目で点を取れても、横滑りで落とす人が多い傾向があるように思います。
ゲレンデでも検定の事前講習以外で練習している人を見ることはありませんので、普段はあまり必要ない滑り方と思われているのかもしれません。
でも、横滑りでエッジを外して面で滑る方法を覚えれば、スキーの滑りに幅ができので、良い練習だと思いますよ。僕がレッスンする時も横滑りをすることが多いです。
落ち着いて滑る
もう一つ、S氏がしきりに訴えていたのは、スキーはとてもシンプルな運動なのに無駄な動きによってスムーズな滑りが出来ないケースが多いということ。
これはメンタル的な要素が強いのですが、ハイスピードや急斜面、コブ斜面などでは、慌てて滑ってしまいがち。そうなると余計なところに力が入り、動かさなくてはいけない部分が動かず、動かさなくていい部分が動いてしまうというわけです。
S氏は、急斜面やハイスピードで滑る状況ほど、落ち着いて滑ることで、力が抜けて良い滑りができるとアドバイスしてくれました。
最後に
ということで、今日は往年の名デモS氏のレッスンで感じたこと(一部ですが)を書いてみました。
余談ですがS氏は本当に滑るのが大好きなんだということを、つくづく感じました。指導者であっても避けてしまいそうな、急斜面や悪雪、コブなどを好み、心の底から楽しそうに滑ります。
それから下手くそな僕たちの滑りに対しても良い部分を褒めてくれます。これ、指導者としては大事なことなんですけどね。
人間的にも魅力いっぱいのS氏、また機会があればレッスンを受けてみたいと思います。それと、まだまだ書ききれないS氏のレッスン内容についても、機会があれば記事にしたいと思います。
では、今日はこのへんで。